std::thread::joinの概要
C++のstd::thread::join
は、スレッドが終了するのを待つためのメソッドです。このメソッドは、スレッドが終了するまで呼び出し元のスレッドをブロックします。
以下に簡単な使用例を示します。
#include <iostream>
#include <thread>
void hello() {
std::cout << "Hello, World!" << std::endl;
}
int main() {
std::thread t(hello);
t.join(); // ここでスレッドtが終了するのを待つ
return 0;
}
このコードでは、hello
関数を新しいスレッドで実行しています。そして、t.join()
によりそのスレッドが終了するのを待っています。t.join()
が呼び出されると、そのスレッドが終了するまでメインスレッドはブロックされます。
std::thread::join
は、スレッドが終了した後にリソースを適切に解放するためにも重要です。スレッドが終了した後にjoin
を呼び出さないと、リソースがリークする可能性があります。これを避けるためには、スレッドが終了したら必ずjoin
を呼び出すようにしましょう。ただし、join
はスレッドが終了するまでブロックするため、デッドロックを引き起こす可能性があります。これを避けるためには、std::thread::detach
を使用することもあります。
以上がstd::thread::join
の基本的な概要となります。次のセクションでは、std::thread::join
の使用条件について詳しく説明します。
std::thread::joinの使用条件
std::thread::join
を使用する際には、以下の条件を満たす必要があります。
-
スレッドが実行可能な状態であること:
std::thread::join
は、スレッドがまだ実行中であるか、またはまだ開始されていない場合にのみ呼び出すことができます。すでに終了したスレッドに対してjoin
を呼び出すと、プログラムは終了します。 -
スレッドがジョイン可能であること:
std::thread
オブジェクトは、join
またはdetach
が呼び出されるまでジョイン可能な状態です。一度join
またはdetach
が呼び出されると、そのスレッドはジョイン不可能な状態になります。ジョイン不可能なスレッドに対してjoin
を呼び出すと、プログラムは終了します。 -
スレッドがデタッチされていないこと:
std::thread::detach
が呼び出されると、そのスレッドはデタッチされ、その終了を待つことはできなくなります。デタッチされたスレッドに対してjoin
を呼び出すと、プログラムは終了します。
以上がstd::thread::join
の使用条件です。これらの条件を満たす限り、std::thread::join
は安全に使用することができます。次のセクションでは、std::thread::join
の効果と同期について詳しく説明します。
std::thread::joinの効果と同期
std::thread::join
の主な効果は2つあります。
-
スレッドの終了を待つ:
std::thread::join
は、そのスレッドが終了するまで呼び出し元のスレッドをブロックします。これにより、スレッドが終了するまでの間、他の処理を行うことができます。 -
リソースの解放: スレッドが終了した後、そのスレッドが使用していたリソースは自動的に解放されます。これにより、リソースリークを防ぐことができます。
また、std::thread::join
はスレッド間の同期を行うための重要な手段でもあります。std::thread::join
を使用することで、複数のスレッドが同じリソースにアクセスする際の競合を防ぐことができます。
例えば、以下のコードでは2つのスレッドが同じ変数i
にアクセスしています。
#include <iostream>
#include <thread>
void increment(int& i) {
for (int j = 0; j < 1000000; ++j) {
++i;
}
}
int main() {
int i = 0;
std::thread t1(increment, std::ref(i));
std::thread t2(increment, std::ref(i));
t1.join();
t2.join();
std::cout << i << std::endl;
return 0;
}
このコードでは、t1.join()
とt2.join()
により、t1
とt2
が終了するまでメインスレッドがブロックされます。これにより、t1
とt2
がi
をインクリメントする操作が完全に終了した後で初めて、i
の値が出力されます。これがstd::thread::join
による同期の一例です。
以上がstd::thread::join
の効果と同期についての説明です。次のセクションでは、std::thread::join
の事後条件について詳しく説明します。
std::thread::joinの事後条件
std::thread::join
を呼び出した後、以下の事後条件が成り立ちます。
-
スレッドの終了:
std::thread::join
が返った時点で、そのスレッドは必ず終了しています。これはstd::thread::join
がスレッドの終了を待つブロック操作であるためです。 -
リソースの解放:
std::thread::join
が返った時点で、そのスレッドが使用していたリソースはすべて解放されています。これにより、リソースリークを防ぐことができます。 -
スレッドのジョイン不可能状態:
std::thread::join
が返った時点で、そのスレッドはジョイン不可能な状態になります。つまり、同じスレッドに対してjoin
を再度呼び出すことはできません。
以上がstd::thread::join
の事後条件です。これらの条件を理解することで、std::thread::join
の動作をより深く理解することができます。次のセクションでは、std::thread::join
の例外処理について詳しく説明します。
std::thread::joinの例外処理
std::thread::join
は、特定の条件下で例外をスローします。以下にその条件を示します。
-
スレッドがジョイン不可能な状態である:
std::thread::join
は、スレッドがジョイン可能な状態である場合にのみ呼び出すことができます。スレッドがジョイン不可能な状態である場合(つまり、すでにjoin
またはdetach
が呼び出されている場合)、std::system_error
例外がスローされます。 -
スレッドがデタッチされている:
std::thread::detach
が呼び出されたスレッドは、その終了を待つことはできません。デタッチされたスレッドに対してjoin
を呼び出すと、std::system_error
例外がスローされます。
これらの例外を適切に処理することで、プログラムの安全性とロバスト性を向上させることができます。例外処理は、マルチスレッドプログラミングにおいて特に重要です。次のセクションでは、std::thread::join
の具体的な使用例について詳しく説明します。
std::thread::joinの具体的な使用例
以下に、std::thread::join
の具体的な使用例を示します。
#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>
void worker(int id) {
std::cout << "Worker " << id << " is starting.\n";
std::this_thread::sleep_for(std::chrono::seconds(2));
std::cout << "Worker " << id << " is finishing.\n";
}
int main() {
std::vector<std::thread> workers;
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
workers.emplace_back(worker, i);
}
for (auto& t : workers) {
t.join();
}
std::cout << "All workers have finished.\n";
return 0;
}
このコードでは、5つのワーカースレッドを作成し、それぞれが2秒間スリープした後に終了します。メインスレッドは、すべてのワーカースレッドが終了するのを待つためにstd::thread::join
を使用します。
この例では、std::thread::join
がスレッドの終了を待つため、すべてのワーカースレッドが終了した後で初めて「All workers have finished.」と出力されます。これにより、スレッドの終了順序を制御することができます。
以上がstd::thread::join
の具体的な使用例です。この例を通じて、std::thread::join
の動作と使用方法を理解することができます。この知識を活用して、効果的なマルチスレッドプログラミングを行いましょう。この記事がお役に立てれば幸いです。次回もお楽しみに!