C++11における条件変数の基本
C++11では、std::condition_variable
というクラスが導入されました。このクラスは、スレッド間での同期を行うためのものです。具体的には、あるスレッドが特定の条件を満たすまで他のスレッドを待機させることができます。
以下に、std::condition_variable
の基本的な使用方法を示します。
#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>
std::mutex mtx;
std::condition_variable cv;
bool ready = false;
void print_id(int id) {
std::unique_lock<std::mutex> lock(mtx);
while (!ready) {
cv.wait(lock);
}
std::cout << "thread " << id << '\n';
}
void go() {
std::unique_lock<std::mutex> lock(mtx);
ready = true;
cv.notify_all();
}
int main() {
std::thread threads[10];
for (int i = 0; i < 10; ++i)
threads[i] = std::thread(print_id, i);
std::cout << "10 threads ready to race...\n";
go();
for (auto& th : threads) th.join();
return 0;
}
このコードでは、10個のスレッドが生成され、それぞれがprint_id
関数を実行します。この関数内では、std::condition_variable
のwait
関数を使って、ready
変数がtrue
になるのを待っています。go
関数が呼ばれると、ready
変数がtrue
になり、notify_all
関数によって待機していたすべてのスレッドが再開します。
このように、std::condition_variable
は、複数のスレッド間での同期を取るための強力なツールです。しかし、複数の条件変数を待つ場合には、さらなる注意が必要です。次のセクションでは、その詳細について説明します。
複数の条件変数を待つ方法とその問題点
複数の条件変数を待つ場合、一般的なアプローチは各条件変数に対して個別のスレッドを割り当てることです。しかし、この方法にはいくつかの問題点があります。
まず、スレッドの数が多くなると、それぞれのスレッドがCPUリソースを必要とするため、パフォーマンスが低下する可能性があります。また、各スレッドが異なる条件変数を待つため、一部の条件が満たされたときに他のスレッドがまだ待機状態にあると、デッドロックが発生する可能性があります。
これらの問題を解決するためには、複数の条件変数を効率的に待つ方法が必要です。具体的な解決策とその実装については、次のセクションで説明します。この解決策を理解するためには、C++のスレッド、ミューテックス、条件変数の基本的な知識が必要です。これらの基本的な知識がない場合は、先にそれらを学習することをお勧めします。それにより、この記事の内容をより深く理解することができます。
それでは、次のセクションで具体的な解決策とその実装について見ていきましょう。
それでは、次のセクションで具体的な解決策とその実装について見ていきましょう。
効率的な解決策とその実装
複数の条件変数を効率的に待つための解決策は、std::condition_variable_any
を使用することです。std::condition_variable_any
は、任意のロックを使用できるようにstd::condition_variable
を拡張したものです。
以下に、std::condition_variable_any
を使用して複数の条件変数を待つ例を示します。
#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>
std::mutex mtx;
std::condition_variable_any cv;
bool ready = false;
void print_id(int id) {
mtx.lock();
while (!ready) {
cv.wait(mtx);
}
std::cout << "thread " << id << '\n';
mtx.unlock();
}
void go() {
mtx.lock();
ready = true;
cv.notify_all();
mtx.unlock();
}
int main() {
std::thread threads[10];
for (int i = 0; i < 10; ++i)
threads[i] = std::thread(print_id, i);
std::cout << "10 threads ready to race...\n";
go();
for (auto& th : threads) th.join();
return 0;
}
このコードでは、std::condition_variable
の代わりにstd::condition_variable_any
を使用しています。これにより、複数の条件変数を効率的に待つことができます。
しかし、この方法でも完全な解決策とは言えません。なぜなら、std::condition_variable_any
は内部でstd::condition_variable
を使用しており、そのためのオーバーヘッドが発生するからです。したがって、最適な解決策は、アプリケーションの要件によります。
以上が、C++における複数の条件変数を待つ方法とその問題点、そして効率的な解決策とその実装についての説明です。これらの知識を持つことで、より効率的なマルチスレッドプログラミングが可能になります。
それでは、次のセクションで具体的な解決策とその実装について見ていきましょう。
それでは、次のセクションで具体的な解決策とその実装について見ていきましょう。